vol.5 黒髪の正体
中学時代でしょうか、後頭部にチラチラと白髪のあることに気付いたのは。
それから数は増えたものの全体がごま塩頭になったわけでもなく、男ということもあったでしょうが、あまり気にせず過ごしてきました。
しかし、40歳を過ぎたあたりで髪を染めるようになりました。なにがきっかけだったか、今となってははっきりと思い出せません。
以来20年近く髪を染め続けてきたのですが、先月なぜか染めるのが億劫になりました。長ネギのように髪の根元が白くなってみっともないのですが、染める気になりませんでした。
散髪屋に行くと思いっ切り短くしてくれるよう頼みました。まだ染めた黒い部分が少し残っていましたが、それでも別人のような風貌になりました。
回りの反応は、驚いたような顔をする人もいれば、見飽きたように一言もない人、自然でいいと妙に納得気でじろじろ見る人などまちまちでしたが、1ヶ月あまりが経ってふと気付きました。
男であれ女であれ、人が着飾ったり化粧をするのは異性を意識するからだとずっと思ってきました。髪を染めはじめたのも今想像すれば歳を感じ少しでも若く見せたいと思ったからではないでしょうか。詰まるところ、それは女性の目を意識したものだと思います。
今回髪を染めることが億劫に思えてきたのも、60歳も目前になりもはや異性の目などどうでもいいような気になったからとも思えます。
しかし、1ヶ月あまりが過ぎて思い違いをしていたような気になりました。
若く見せたい、あるいはおしゃれをするのは異性を意識するからに違いはないのですが、もっと根っこの部分は美しくありたいつまりは若くありたいという本能的な欲望に思えたのです。
車の窓ガラスや店のウインドにチラッと写った白髪頭の自分を見るとき、紛れもないジジイに思えもはや若いころの自分でないことを知らされますが、そんなとき思うのです。
私の髪を黒くさせてきたものの正体、本能的な欲望とは異性の目なんかではなく、老うことを恐れる自分自身の目だったように。
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