vol.312 財務諸表では、本当の利益はわからない
こんにちは。
我が地元では、竜巻の被害が甚大でした。被害にあわれた方の早い復旧が待たれます。
さて、今回は、「財務諸表では会社の本当の利益はわからない」ことを説明させていただきます。
例えば、当期利益500万円の会社が、土地を取得し、不動産取得税1000万円が課税されたとします。不動産取得税は税務上、経費に落とす方法と資産の取得価格に算人する方法の2つの経理処理が認められています。
1. 経費処理の場合 | 2. 資産計上の場合 | |
当初利益 | 500万円 | 500万円 |
追加の経費 | 1000万円 | 0万円 |
差引当期利益 | ▲500万円 | 500万円 |
利益が出ている 2 が良い会社に見えますが、実態は同じですよね。つまり税制上認められる処理をどう選択するかによって、利益は変わるのです。ほかにも例をあげれば、
- 減価償却方法→原則として定率法、定額法のどちらでも選択できる。
- 棚卸資産の評価→低価法、原価法、或いは個別法、総平均法、移動平均法など。
- 少額資産の処理→10万円未満の資産を固定資産にするか経費にするかは自由等。
要は、財務諸表では本当の利益はわからないのです。
事業の目的は利益を増やすことですが、利益は単なる「差額概念」でしかありません。
例えば借金で設備投資をして利益が1000万円増えても、半分が掛け売りだったら、売掛金が500万円増加となります。そして当期納税は400万円増加、来期の予定納税は200万円増加となり、借金の返済どころか手元資金そのものが100万円の不足となってしまいます。
どんなに利益があっても、資金が足りなければ企業は倒産します。経営者にとって本当の利益とは、手元にある自由に使える現金を増やすこと、ではないでしょうか?
実は、資金会計理論を使えば、利益と資金を直結させて、本来の経営に役立てることができます。儲かったはずなのに何故お金がないか、大きな新規受注を獲得すると資金がいくら足りなくなるか、或いは設備投資にいくらお金を使えるか、借入金はいくらが良いか、返済期間は何年が良いかなども、資金会計から見れば一目瞭然にわかります。
「お金には色がついて」います。
今あるお金のうち、儲けで生まれたお金と、会社を通過するお金(借入など一時的に存在するだけのお金)を分けることで、「利益を現金で残す」経営が実現できます。
2012年5月5日号(312号)
文中、1. 2. 3. の部分の原文は、それぞれ○付きの数字です。
このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『佐藤会計・タックスニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。