vol.335 帰宅困難者対策としての災害用備蓄品の購入
風薫る5月となり、天気の良い日は目に染みる青葉を楽しめる季節となりました。
本来は、暑くもなく、寒くもないこの時期が、1年で最も過ごしやすい時期であるはずですが、ここ何日かは一気に夏到来という暑さで、あまりの暑さに都内では小学生が熱中症で病院に搬送されたようです。体調管理には十分気を付けましょう。
さて、毎日のように、富士山の噴火や南海トラフの地殻変動など、地震国日本に居住する我々にとっては、逃れられないリスクを認識せざるをえない報道が続いています。
東京の直下型地震の可能性は相変わらず高いものがあるようですし、国内の活断層も調査精度が上がれば上がるほど数が増えていく現状にあります。地震が起こる前の備えとして、我々もいろいろと対処しておかなければなりません。
都内のみならず地方においても、地震被災時の移動手段は自動車は難しく、徒歩、或いは被災した地域で何日間か「待機」せざるを得ない状況が予想されます。では、企業が、あらかじめ帰宅困難者対策として災害用備蓄品を購入した場合、実際の被災時までは使用はされずストックされるわけですので、棚卸資産や貯蔵品として資産計上しなければならず、一時の損金として処理することは認められないのでしょうか?
首都圏で大きな災害が起こると数百万人の帰宅困難者の発生が予想され、内閣府や東京都は、首都直下地震の発生を想定し、帰宅困難者の対応等に関する指針として、従業員用の3日分の食料品や飲料水、毛布などの備蓄品を常備するよう促しました。
法人税法上、消耗品などの棚卸資産等の取得に要した費用は、その棚卸資産を実際に使った事業年度の損金の額に算入することになります。ただし、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品等の棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日(購入した日)の事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認めることとしています(法基通2-2-15)。
原則的には、法人が取得した消耗品等の棚卸資産については、使用した事業年度にその使用分を損金算入し、残りは棚卸資産等として資産計上するのですが、万が一の災害に備えて購入した災害用備蓄品は、備蓄時に事業の用に供されたものとして、その時の損金の額(消耗品費)に算入して差し支えないとされています。
したがって、帰宅困難者対策として災害用備蓄品を備え付けるための費用は、その備蓄時(買ったとき)に損金で落として構わないということのようです。
備えあれば憂いなし、ですね。節税対策にも使えますし。
2013年5月5日号(335号)
このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『佐藤会計・タックスニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。