vol.228 執行役員昇任に伴う退職金の打ち切り支給
こんにちは。
今年は各地の雪の便りが早いようですね。地球全体では温暖化なのでしょうが、地域的にはまちまちのようです。天候も経済と同じくマクロとミクロの視点が必要なのでしょうね。
さて、今回は「執行役員昇任に伴う退職金の打ち切り支給」について書かせていただきます。
最近は執行役員制度を導入している会社が多く見受けられるようになりました。法人税法上における役員は、法人の取締役、監査役等で法人の経営に従事しているものとされ、執行役員は、「役員」という呼称はついているものの法定の役員には該当せず、そのためたとえば使用人である部長から執行役員になった場合の退職金の支給は所得税法上の退職所得には該当しないと考えられていました。
しかし、取締役兼務の執行役員は役員に該当すること、また、取締役でない執行役員であっても、経営会議に参加して会社の意思決定に関与しているような者は、「法人の経営に従事しているもの」とされ「みなし役員」に該当することもあることから、最高裁は、使用人から執行役員への就任時に支給される退職手当等が税務上の退職手当金に該当するかどうかは、「特別の事実関係(使用人から執行役員への就任につき、勤務関係の性質、内容、労働条件等において重大な変動があり、実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなど」の有無によって判断するといたしました。この最高裁の判断を受け、税務上も次の 1. から 4. のすべてを満たす場合は「特別の事実関係」があるとされ、退職金の打ち切り支給が認められるとされました。
- 雇用契約を終了し、新たに委任契約を締結する際、法律関係が明確に(従前と)異なること
- 執行役員の任期は通常1~2年とされており、使用人としての再雇用が保障されていない場合には、任期満了時に執行役員等として再任されない限り、会社を去らざるを得ないこと
- 法律関係を委任契約とし、報酬等を役員に準じたものとする場合には、使用人に対する就業規則等は適用されず、労働基準法等の適用も制限されること
- 損害賠償責任について、取締役は過失責任とされており、執行役員についても役員に準ずる責任を有すること。
大きな税法改正ばかりでなく小さな改正でも影響があります。「情報力」はやっぱり大切ですね。
2008年11月20日号(228号)
文中、1. 2. 3. 4. の部分の原文は、それぞれ○付きの数字です。
このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『佐藤会計・タックスニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。