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あけぼの・経営ニュース

vol.380 回収不能債権の一括値引き

 ここ何日かは荒れた天気ですね。早く春の明るい日差しを楽しみたいものです。

 さて、今回は回収不能の債権を一括値引きした場合の税務処理について書かせていただきます。

 たとえば、売掛金残高1000万円のうち300万円が入金され、その残額については先方の経営内容悪化のため、いくらたっても回収できず、やむを得ず一括値引きしたと仮定します。この場合、この値引きは税務上損金扱いできるのでしょうか?

 売上値引とは、販売した商品等について、品違い、品質不良、損傷、汚れ、不足などの理由で商品代金から値引きする金額を処理するための勘定科目ですが、このケースのように不良債権の回収残額に係る売掛金の切捨ては、「売上値引」には該当せず、「債権放棄」(債務者側からすると「債務免除」)として考えるべきと思われます。

 そうすると、その売掛金の切捨てが損金の額に算入されるためには、貸倒損失として認められるかどうかにかかるものと考えられ、認められない場合には売上値引否認や寄附金の認定課税等が行われることが想定されます。

 税務上、貸倒損失が認められる条件は、[1]法人税基本通達9-6-1「金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ」、[2]同9-6-2「回収不能の金銭債権の貸倒れ」及び[3]同9-6-3「一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ」のいずれかに限定されています。

 このうち[2]と[3]は、いずれも「貸倒れとして損金経理をすること」が要件とされていますので、法人が「売上値引」等として経理している場合には、たとえその債権が回収不能の状態にある場合であっても、貸し倒れ経理をしておりませんので、[2]及び[3]の取扱いを適用できません。

 では、[1]の法人税基本通達9-6-1の要件はいかがでしょうか。

 ここでは貸倒れとして損金算入する金額として「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額」とされています。従って残債権に係る値引額すなわち債務免除額を、書面にて通知する必要がありますので、口頭で値引きの通知を行い、単に請求書上で値引きしただけでは、この要件を満たさないことになります。

 税務上損金扱いされるための手続きは大切です。

2015年4月20日号(380号)

 文中、[1] [2] [3] の部分の原文は、それぞれ○付きの数字です。

 このページは、佐藤典哉税理士事務所・株式会社あけぼの会計様が発行されている『あけぼの・経営ニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。

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