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佐藤会計タックスニュース

vol.306 債権放棄しない売掛金の貸倒処理

 こんにちは。

 昨日今日は雨のせいか、少し暖かいですね。早く桜を見たいものです。

 さて、厳しい昨今の経営環境では、残念ながら取引先の経営不振のため売掛金を回収できないケースが珍しくありません。すでに仕入資金やその他の経費を支払っている当方としては何年かかっても全額回収したいというのが本音ですので、債権放棄はしたくないが、いつまでも売掛金に残っていてその売上相当分の税金を支払うというのも納得がいかないところです。そこでいったん貸倒処理して、もし入金があったら売上計上、または過年度損益修正益を計上するといった処理は認められるのでしょうか?

 結論を言いますと、こういった場合には備忘価額(1円ですね)を残して貸倒損失を計上できます。

 いわゆる「貸金等」のうち、売掛債権については、法律上及び事実上の貸倒れのような厳格な要件とは異なり、債務者の「資産状況、支払能力等の悪化」があれば、「債務者との取引の停止をした時以後1年以上を経過したこと(担保物を取っている場合は除きます)」という形式基準で貸倒計上が認められています。

 何故なら売掛債権の貸倒れ自体が事業における継続取引の中でしばしば起こり得るものであり、債務者から債権回収を図る手数や時間、あるいは諸経費を考慮すれば、貸倒処理をすることが合理的であると考えられるからです。

 取引先に再三督促したにもかかわらず支払がなされず、しかも同社が多額の負債を抱えたまま社長が行方不明になっており、更には銀行とも取引停止の状態に陥っていることなどは「資産状況、支払能力等の悪化」と考えられます。

 したがって、このような場合には、敢えて内容証明郵便等で債権放棄の意思表示をしなくても、備忘価額1円を控除した残額を貸倒損失として必要経費に算入することができるものと考えられます。

 以前このニュースでも書かせていただきましたが、売掛金を貸倒処理することにより、売掛金分の経費が増えますので、利益を減らし、その会社の総資産額をその分減らし、その結果、流動比率や当座比率を下げることとなります。一方回収できそうもない資産、すなわち「架空」とも言える資産(利益)が貸借対照表からなくなることにより、身軽で資本効率のよい財務内容に変わることができます。利益と資金を直結させる、ことがキャッシュフロー経営の基本です。

2012年2月5日号(306号)

 このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『佐藤会計・タックスニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。

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