vol.279 子会社への債権放棄と経済的利益
こんにちは。
今年の冬は本当に寒いですね。特にここ2~3日の日本海側の大雪は大変です。過疎化で高齢者ばかりの地域にとっては厳しい冬となっています。早く暖かい春が来ることを望んでしまいますね。
さて、過去最高益を計上する上場企業が増えてきたとはいえ、まだまだリーマンショックなどの負の遺産を払しょくできない状況が続いています。そこで今回は、関連会社救済のために債権放棄を行った場合の経済的利益の扱いについて書かせていただきます。
国税庁が、平成22年11月に公表した法人税に係る「質疑応答事例」において、債権放棄の取り扱いを明らかにしています。
法人Aが他の企業C(第三者の企業ですね)に経営権を譲渡するような場合、譲受法人Cとしては、その譲受け後における子会社Bの経営上の責任を考えて、赤字をできるだけ圧縮した上でなければ、譲渡に応じられないという条件を提示することは十分にありうることです。このため、やむを得ず子会社Bに対する貸付金等の一部を切り捨てて、ある程度子会社Bの財政面を改善した上で譲渡する事例が見受けられます。 このような貸付金等の切り捨てについては、親会社Aとして今後発生するであろうより大きな損失を回避するためにやむを得ず行う損失の負担であると認められる場合が少なくありませんので、この損失負担を一概に単純な贈与と決めつけることは適当ではなく、常に法人税法上の寄付金として取り扱うことは実態に即したものとはいえないことから、経営権の譲渡に伴う債権放棄等の損失負担については、損失としてこれを認めるとしたのです。
つまり法人Aが子会社Bの経営権の譲渡に伴う債権の放棄等の損失負担は、それが今後より大きな損失の生ずることを回避するために行われたものであり、かつ、社会通念上も妥当なものとして認められるような事情にある場合には、その債権放棄損失額は、税務上、特別損失等としての処理が認められるということです。
ただしご存知のように、「社会通念上妥当」とか「やむを得ず行う」とか、判断の分かれるところも少なくありませんので、十分検討の上実施していく必要があります。証拠書類もしっかり整えておくべきですね。
2011年1月20日号(279号)
このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『佐藤会計・タックスニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。