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佐藤会計タックスニュース

vol.274 相続開始から遺産分割決定日前日までの家賃収入の取得者

 こんにちは。

 クリスマス・イルミネーション点灯のニュースを、ちらほら見聞きするようになりました。今年は紅葉のニュースさえ盛り上がらなかったのに、一気に冬になってしまう感じがいたします。1年の経つのは本当に早いものですね。

 さて、今回は「相続開始から遺産分割決定日前日までの家賃収入の取得者」について書かせていただきます。

 ご存知かとは思いますが、相続がありその後遺産分割協議が成立(遺産の取り分が決まることですね)した場合、遺産分割の効力は相続開始の時(被相続人がお亡くなりになった日)までさかのぼって生ずるとされています(民法909条)。アパートやマンションを相続で取得すると、その相続による所有権の効力は相続開始日にさかのぼるということです。それではアパートやマンションから得た家賃収入も同じなのでしょうか?

 まず結論から言うと、これらアパートやマンションの家賃収入は、相続財産ではなく別個の賃料債権である、と最高裁は結論付けています。つまり相続開始後に発生した家賃収入は、被相続人が生前所有していた相続財産ではなく、死亡後に新たに発生したものということですね。ある意味当たり前といえば当たり前ですけど・・・。

 相続財産から生じる賃料等について最高裁の判決では、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、(中略)この間の遺産である賃貸不動産の賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する(中略)ため、遺産分割は、相続開始時にさかのぼってその効力を生ずるが、賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。」と判示しています。要は、相続財産から派生した賃料等の果実についての効力は、その相続開始時に遡及しないということです。

 そうしますと、相続開始から遺産分割決定が確定するまでの間に不動産から生じた賃料債権は,相続人らがその相続分に応じて分割単独債権として取得したものということになりますので、賃貸不動産が共有とされていた期間、すなわち相続開始日から分割成立の日の前日までの期間に係る賃料収入については、法定相続分に対応する部分を共同相続人それぞれの賃料収入として、不動産所得に係る総収入金額に算入して確定申告を行っていく(最高裁第二小法廷平成6年2月7日判決)ことになります。

 仮に相続人が3人いて、各人がサラリーマンで給与所得しかなくても、その間の不動産収入をもとに必要経費などの計算をして、翌年3月15日までに確定申告しなければならないわけです。失念すると後が怖い(税務署から指摘を受け、加算税とかもかかりますので)ですね。

2010年11月5日号(274号)

 このページは、佐藤会計事務所(所長・税理士 佐藤 典哉)様が発行されている『佐藤会計・タックスニュース』をちくナビ!でも読めるようにしたものです。掲載上、一部元原稿とはレイアウト等に違いがあることをご了承ください。

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